2016-01-01から1年間の記事一覧

【随筆】桜

不安に怯え目が覚めた。午前3時また中途半端な時間に起きた。夢の中では友達が沢山いた昔懐かしい日々に戻る事ができる。日常より夢の中の方が楽しい。こんな状況信じられない。 胸の内側にべったりと張り付いて離れない後悔。それは一歩み出せない焦り、恐…

【随筆】触

白い吐息が溶け込む師走の空気はピンと張り詰め、車のライトや看板の燈をキラキラと輝かせた。 僕の掌は人より温かいんだよ。心は冷たいのかな、突如思いついた変な誘い文句で君の右手を誘き出す。 それは雀を捕まえようと庭に餌を置き、つっかえ棒をして籠…

【随筆】吐

私の人生でこれ以上の底はないであろう。老いて身体の自由が効かなくなり挑戦できないならきっぱりと諦めがつく。 しかしこんな健全な体躯もってしても相変わらずある一点から先へ歩みを進めることはできず歯痒さで満ちる。 それは目の前で愛すべき妻が強姦…

【小説】山道 01

日中に降り続いた雨の影響でねっとりと湿り気を帯びた生乾きの道路を前照灯で照らしながら車は鬱蒼とした杉林の間を進んだ。 「タバコ持ってる?」祐二がヒデに言った。 「はい」ヒデはスタジャンの内ポケットからアカマルのソフトパッケージを取り出すと一…

【小説】妻と画家 01

ショーウィンドウのガラスのせいもあるのだろうかやたらきらびやかな店が何軒も軒を連ねる通りで男は女に近づいていった。 「すいません。モデルになっていただけないでしょうか。」 細めの紺のデニムに白のTシャツ、オリーブ色のミリタリージャケットをサ…

【随筆】 懺悔

全てが嫌になり俺は人との連絡を絶った。そうして自分に都合の良い人間だけを几帳面に周りに配置した。いや、人から見れば俺が輪の外に配置された事になる。 人は人を評価するだけの対象物にしか過ぎない。その頃の俺は人からの恩義も忘れて本気でそんな事を…

【随筆】問答

⚫︎やりたいこと無いのか? ⚪︎やりたい事か、無いわけじゃ無いがそれが本当にやりたい事かわからない。結構いくつもあるからなぁ。 ⚫︎そうか。確かに今すぐ死ぬってわけじゃないからな。明日も今日やたら無茶な事しなかったら生きてるだろうし、明後日も明日…

【随筆】コイン

外見ばかりがかっこよくても中身が伴わないとな。 せっかくおしゃれな店で美味しいコーヒーを飲み、店員さんとのスマートなやり取りを終えた後であいつは俺にそう語りかける。 こいつが憎たらしいのは口が汚い上に妙に核心のついた事を言うからだ。 幾度とな…

【小説】ATTACK 01

駐車場に向かう。階段を1つ2つ下りていく。 女は夕飯は何が良いかと私に聞いてくる。 肉が食べたい。 昔からあまり食というものにこだわりが持てない性分なのだ。 口から入って養分を吸収して尻から出る。 その条件を満たせるものであればファーストフード…

【随筆】キンモクセイ

キンモクセイが香り出した。今年もそんな季節がやってきた。 香りには記憶を呼び覚ます力がある。覚えのある香水の香りと街中で出会い、昔き合っていた異性に思いを馳せる。 私にはキンモクセイが思い出させる記憶がある。 高校生の時、男女混合の部活動をし…

【随筆】コーヒー

朝コーヒーを淹れたら洗剤臭かった。 洗剤を良くすすいでいなかったせいだろう。 洗剤臭いコーヒー。 でも勿体無いから急いで全部飲み干した。 洗剤入りのコーヒーが存在しているのが嫌だった。 失敗は失敗の責任を取り、早く片付けてしまいたい。 胃が痛い…

【随筆】服が好き

私は服が好きだ。ブランドじゃなくて服が好きだ。だからハイブランドでもデザインや素材が気に入らないと購入を控える。 私は服が好きだ。一軒、二軒周っただけじゃ買わない。三軒、四軒、いやもっとそれ以上周り最終的に最初の一軒目に戻って買うという事も…

【随筆】工場

長年使い続けられても今だに堅牢で威厳を放つ機械。 その機械と機械が擦れ合い断末魔の様な叫び声がオイルの匂いで充満した空間に反響する。 工場というところは一から物を作り上げる人間の創造性と人間すらも生産までの一つの部品として位置付ける無機質さ…

【随筆】悩み

あまりにも稚拙な夢を見たとき、自分は成長しきれていないのではと不安になる。 そんなと無いさ。誰だって夢の中では自由なんだ。 都合よくそんな一言を言ってくれる人間を持っていない。 それは夢の話しほど微かなもので繊細なものは口頭で伝えようにも伝え…

【随筆】秋分の日

雨降りしきる秋分の日 朝飯を6時から作り、洗濯物をして、ゴミを出して、コーヒーを淹れて、雨が凄いから庭のパクチーを軒下に取り込んだ。 唐突だが 都内で海老ラーメンが食べられる店はゴノガミ製麺所以外に何処かあるのか? 青梅のいつ樹は移転してしまっ…