【随筆】 懺悔

全てが嫌になり俺は人との連絡を絶った。そうして自分に都合の良い人間だけを几帳面に周りに配置した。いや、人から見れば俺が輪の外に配置された事になる。

 

人は人を評価するだけの対象物にしか過ぎない。その頃の俺は人からの恩義も忘れて本気でそんな事を考えていた。思考を何か絶対的な所に落ち着かせたかった。そうしないと自分自身がたちまち壊れてしまいそうに思えた。

 

良くも悪くもないそのどっちつかずが一番不安で仕方ない事だ。良しと思えないならいっその事、悪だと考える。そうしたどちらか一方に心を落ち着かせたいという思考が臆病者の心理であり心の拠り所だ。つまり不安の安定に仮初めの安定をみる。

 

人に気を使うのも使われるのも嫌だった。幾度も電話とラインでコンタクトをとろうとする友人。

 

携帯電話を見ながら罪悪感と優越感を帯びた何とも形容しがたい感覚が沸き起こる。それは新進気鋭の画家のパレットの中で調合される斬新な色の組合のように一見すると不調和だが妙な安定性があった。

 

やってはいけない事だとわかっていながらやってるだけに俺のしていることはきっと想像以上に罪深いものだろう。しかし人間とは元来理屈だけでは語る事ができないものではないのか?

 

そう自分を弁護しつつ今日もまた妙な安定性の中に居座る。これといった活路も見出せずに。