【随筆】吐

私の人生でこれ以上の底はないであろう。老いて身体の自由が効かなくなり挑戦できないならきっぱりと諦めがつく。

 

しかしこんな健全な体躯もってしても相変わらずある一点から先へ歩みを進めることはできず歯痒さで満ちる。

 

それは目の前で愛すべき妻が強姦されているにも関わらず涙する妻の手をやはりこれも涙しながら握りしめる事しかできない夫のような。

 

思索ばかりがあれやこれやと先行し肝心なところは地に足ついた誰かの世話になるばかり。

 

親、兄弟、親戚に合わせる顔はどこにも無く。一人殻にこもり自身の行く末を案じる。

 

そして気付けば己の事ばかり懲りもせず考え、愛とは名ばかりのの自己愛に満ちたしがない一日を過ごす。